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アスリート社員「上里琢文が行く!」~ 電子電気分野の仕事とは?~

弊社アスリート社員/上里琢文選手(ビーチサッカー日本代表)の「上里琢文が行く!」

このシリーズ企画は、上里選手が弊社の部署や社員などにインタビューを実施し、アスリートならではの視点をふまえ、皆さまに弊社のことをより知っていただく為のものになります。

今回は、弊社研修施設 A-LABOの電気電子分野のトレーナー、W・Mさんにインタビューをさせていただきました。(2023年9月)お話しいただいた内容は・・・

・電気電子分野の仕事とは?
・開発設計者への道
・求人案件の実務内容

以上の3テーマとなります!

■ 電気電子分野の仕事とは?

上里:本日はよろしくお願い致します。

W:こちらこそお願い致します。

上里:本日は専門分野の業務内容を業務別に教えていただきたいのですが、その前にまずは全体感を掴んでおきたいです。セントラルの新卒採用では「機械」「電気電子」「IT /情報」と大きく3つの分野に分かれています。渡辺さんが担当されている「電気電子」分野というのは、技術的にはどのような領域になるのでしょうか?

W:はい簡単ですが。

【電気電子分野】家電製品もそうですが、大きくは飛行機やビル、工場、プラントなど引っくるめて産業機器といいます。その中で、電気電子分野の担当箇所は「制御設計」がメインとなります。実際に手に取って触ることができる「ハードウェア」(機器の中にある電子部品や機械部品)と、ハードウェアを制御するためのプログラムやアプリケーションである「ソフトウェア」の設計や開発が主な業務になります。

【機械分野】 機械の設計や製造、保守などが主な仕事です。旋盤や溶接などの機械加工に関する知識や技術が求められます。

【IT/情報分野】 ソフトウェア開発やデータベース管理、ネットワーク設計などが主な仕事。この分野では、プログラミングやネットワークなどのコンピュータに関する知識や技術が求められます。

上里:大きなくくりは理解できました。電気電子分野の「ハードウェア」というのは、緑色の板に細かい部品がはんだ付けされている基板だと思ってまちがいないですか?

W:概ね合っています。「制御設計」とは、機器全体を制御することが目的です。そのため「機器全体の仕組み」を理解する必要があり、実際の機器の機械部分と制御部分が相互にうまく関連してシステムとして成り立つように設計していく必要があるんですね。

上里:自分の分野のことだけを知っているだけでは実務はできないということですね。他分野(機械/情報)との扱う分野としては、境界線はあいまいなのでしょうか?

W:電気と機械ははっきり分かれていますが、お互いに知っていなければならない部分があります。例えばモーターでものを動かす時に、どっち方向に動かすのか?モーター1回転で何ミリ動くのか、どれくらいの速度で動かすのか?など、共通して認識しておかなくてはいけません。

上里:確かにそうですね。

W:電気電子分野ならではの業務例を挙げると、例えばエレベーターの設計をするとします。普通の扱いかたは、ゴンドラを呼ぶ、行き先ボタンを押して、停まったら降りるわけですね。ところが実際に運用してみると、正しい使い方ではなく、間違えて上行きのボタンと下行きのボタンを両方押してしまったとか、何か機械装置が故障してしまうこともあるわけです。そのため、制御プログラムとしては、誤操作や異常処理に対応するプログラムの方が多くなるのですが、全体の装置のことも知らないと制御できませんよね? そういう点で、例えば機械設計での「ここの部分(だけ)の設計」といった観点とは違ってくるわけです。

上里:通常に動作させるプログラムは普通に組めば出来そうですが、イレギュラーへの対応をプログラムするのは大変そうな気がします。誤操作はどうやって予想するのですか?

W:マトリクスを作って、必ず全ての操作を網羅します。機械装置を制御するプログラムは、

  • 正しく操作される場合

  • 間違って操作した場合

  • 壊れた場合にどうするかというもの

全ての機器は必ずこの3種の想定がされています。メインのプログラム、つまり通常動作のプログラムが一番簡単で作りやすい。ここA-LABOでやっている研修でも基本動作をメインにやっています。メインのプログラムがきちんと設計できれば、異常処理も誤操作の処理も作れるようになります。

上里:普通に動作させるだけでなく、裏ではあらゆる事態に対応するためのプログラムが走っているとは知りませんでした。こういった基礎知識もきちんと研修内容に入っているのですね。

W:製品作りの話が出たので、学生さんからよく聞かれる質問に「製品が世にでるまでに、メーカー(製造会社)ではどのような業務があるのですか?」というものがありますので、ここで説明しておきますね。

【一般的な会社での主な会社組織】
会社全体の管理をする「総務部」「人事部」「経理部」があり、その下には、商品開発に深く関わる部署として、研究部、知財部、開発部、製造部、品質保証部、デザイン部、営業部といった部署があります。

新商品を開発しようとする場合、上記の部署が参加し、

「商品化会議→企画会議→機能試作会議→生産試験会議→商品販売会議→商品評価会議」

といったステップを踏みつつ、商品がイメージから具体的なものになっていきます。

その間には各種法規制(安全試験、各国法規制など)や各種試験(環境試験、振動試験、温湿度試験)もクリアする必要があります。ここにもかなりの工数や労力がかかります。

【企画会議】企画段階では、商品化プロセス、機能試作への移行、商品化計画の可否、市場調査、前述の各種規制と試験等の条件を満たしたうえで、さらに既存技術に加え研究部の新技術、さらに他社の技術などを考慮した上で、企画会議を通過します。

【機能試作会議】企画内容を満たし、生産試作が可能で、経営ニーズに合致し、各種規制と試験をクリアしたものが、ようやく「実験機A」「実験機B」「機能試作機1」「機能試作機2」「機能試作機3」と段階的に機能面に特化した試作機を製作し、機能試験会議をパスすることができます。

【生産試作段階】機能試作と同様の条件で生産試作機を製作、生産試作会議をパスできるとようやく生産体制に移行します。

【生産段階】1号機を製造し、生産設計、生産原価、生産手段、生産技術を見直し検討、そうして2号生産機を販売しいきます。

【販売段階】販売時には宣伝、サービス、商品切り替え、マーケティング、次世代機への企画資料を作成し商品評価会議にて社内で商品評価をされていきます。

このように大変長い期間を経て、新しい製品が世に出ていくのです。また製造の過程にも、検査と調査が繰り返されています。実験、試作、検査や調査と、一般には知られていない業務も多数存在するんです。

上里:たくさんの工程がありますね。それだけ多くの人が関わっているんですね。

W:そうですね、これまでに無かった完全な新製品は企画から販売まで2〜3年程度かかるものですが、実際には、完全な新製品の数はそれほど多くはなくて、モデルチェンジの場合が多いのです。この場合は市場のトレンドもありますので、1年程度のサイクルで回しています。

上里:年々トレンドの変化も早くなってきていますよね。

■ 開発設計者への道

上里:設計者は人気職業なのですか?

W:ものづくりに関わろうとする学生さん、新卒社員には人気があるようですね。ただ実際、例えば設計部門に10人入ってきても、実際に設計の道に進める人は5人以下ですね。設計以外の検査やメンテナンスなど、関連業務に就くことになります。

上里:なかなか狭き門なのですね。

W:というのも理由がありまして、設計の業務には向き不向きがあるのです。単に優秀なだけではやっていけません。

上里:何が必要なのでしょうか?

W:一つは「センス」です。視野が広くないといけない。電気専攻だからと電気のことしかわからない人には出来ないです。それからもう一つは「社会性」なんですよ。社会性の必要性について、特に学生さんは理解が足りていないことが多いです。チームを組んで仕事をし、他の部門や取引先と会うこともあるので、社会性は欠かせません。似たようなイメージですが、ここでいう「社会性」とは、「コミニュケーション能力」とは違うものです。

上里:コミュニケーション能力とは違うのですか?

W:コミニュケーション能力はもちろん必要ですが、技術者として必要な「社会性」とは、

・相手に説明できるか
・相手と相談できるか
・しっかりと意見を主張できるか

というところなのです。資料を使ってプレゼンをする機会もあるでしょう。その際は論理的な説明ができるプレゼン資料(パワポなど)と客観的な書類も作成できなくてはけません。

上里:社会人としての対話能力といったところですね。先ほどの、新入社員で開発部門に配属された10人の中で、設計に進める人にはどんな特徴があるのですか?

W:広い視野を持ち、質問に対して幅広く答えられることと、テーマに対して回答するまでの時間が早いことです。それは頭の回転が早いということもあるかもしれませんが、分析力があるのではないかと感じています。そういう人は2〜3ヶ月も過ぎると勝手に成長しています。

上里:優秀な方は心配ないとして、教える立場で言えば、そうではない方もある程度のレベルにまで引き上げなくてはならないのではないですか?

W:優秀というか、向いている人ですね。能力そのものは全員あるんです。それぞれ得意分野はありますので、全員がコンピューターの回路設計をしなくてもいいわけです。業種も様々ありますから。

上里:育成段階で個性を伸ばした方がうまくいくのは、サッカーと同じですね。苦手なプレーはなかなかうまくならないけれども、得意なことはさらに磨きやくすて伸びやすい。

W:そうです。だから出来ないところで減点することよりも、得意なところで評価されるようにしてあげたいですね。

上里:A-LABOの基礎研修では基礎知識は一通り教えていただけるのですか?

W:もちろんです。新卒研修では設計者になるための基礎を徹底的に教えています。だからちゃんと習得すれば確実に設計者として仕事ができるような構造になっています。しかし中にはそこまで到達できない人もいます。到達できなくても、その経過の知識でできる業務、実験やデータ収集、組み立てなどの業務には就ける内容にしています。

上里:教えていただけるとはいえ、本当の基礎は学校で学んでくるもののような気がします。

W:はい、学校での勉強は非常に重要です。ここでの研修でも復習は一通りしますが、基礎知識が欠けていると補うのにかなり苦労します。

上里:特に重要な科目は?

W:技術的な部分も重要ですが、負けず劣らず数学が重要なんです。この2つが出来ない人は設計者にはなれません。なにせ数字でしか表せられない世界ですので、数学がわからないと設計者としては難しいですね。そんな難しいことは要求していないのですよ、高校数学程度がしっかり理解できていることが前提です。

■ 求人案件の実務内容

上里:以下、キャリアの業務内容ですが、今求人されている業務の名前を拾ってきました。それぞれ具体的にどんな業務内容なのか教えてください。

W:(以下回答)

・回路設計:設計ができることが前提で、ゼロイチではなく、ある程度進捗しているものを進めることが多い(例:電源部分のみ、インターフェイス)

・レイアウト設計:アートワークのレイアウトは、実験ができる程度のスキルがあれば実務可能。

・論理回路設計:論理式を組み立ててコンピューターを作っていく。専用CADを使用。難易度の幅が広い。

・試作:試作機の設計。一般には相当数が必要だが製品によりけり。回数が必要な場合も。

・不具合解析:電気分野も機械分野も可能。耐久試験は機械分野が担当。

・PLCプログラム:基盤設計コンピューターの仕様書、1000ページ以上を読めなくてはいけない。 PLC制御の装置は一般に数多く使われている。仕様変更をするものは必須。プラント制御コンピュータでは1970年から導入。

・半導体製造装置のフィールド業務:装置のメンテナンス。人員はたくさんいる。技術力が必要。実験、実験機の作成、品質管理など。

上里:ありがとうございます。電気分野の仕事のやりがいはどんなところにあるのでしょうか?

W:開発設計技術者は製品に対する責任を負っています、同時に社会的責任も担っています。そのため開発設計の仕事の責任は重大ですが、その分、世の中に自分の開発した製品が受け入れられた時は何にも代えがたい大きな喜びを感じる事ができます。

上里:Wさんの成功エピソードを教えてください。

W:では少し長くなりますが、、、

バブル全盛期の1990年頃、私は製品開発業務に従事していました。私の開発テーマは、液晶モニターの検査装置の開発です。今はパソコンやテレビモニターとして定着している液晶のディスプレイです。

その当時のモニター機器類はすべてブラウン管でした。学生の皆さんの中にはブラウン管を知らない人もいるかもしれません。ブラウン管モニターは大きくて重く、大画面を作ることができず、せいぜい40インチくらいまでのサイズしか製造することができませんでした。当然ノートパソコンも作れませんでした。

その頃は日本の電気メーカーは、世界と互角に戦っており、”Japan as No1"と言われていた時代です。世界中の電気メーカーが液晶モニター開発に取り組んでいました。しかし当時は製作したモニターを検査する手段がありませんでした。そこで電気メーカ数社から私の部署に検査装置の開発依頼があり、試作機をいくつか開発しました。その試作機を見た一社から共同開発の打診を受け、共同で開発に打ち込みました。私の担当はシステム設計とコンピュータ回路設計とプログラム設計の担当です。

尽力した結果、液晶モニター検査装置は無事完成し、世界中で売れることになります。その当時、この検査装置は液晶モニターのニュース放映の時よく見かけました。とても嬉しく、嫌なことも忘れることができました。紹介された新聞の切り抜きを今でも持っています。

上里:世界初の液晶モニター用の検査機器を開発したってことですよね?すごい! 開発に携わっていれば、そんな体験をする可能性は常にあるわけですよね。夢のある仕事ですね。

W:電気技術に限らず、開発設計の仕事は何にも代えがたい喜びがありますね。

上里:では最後に、未来のエンジニアを目指している若者に向けてメッセージをお願いします。

W:学生の皆さん、開発設計者を目指しましょう。開発技術者としてキャリアを積む人生は充実感を味わえます。

上里:本日はありがとうございました。

W:こちらこそありがとうございました。

W・M

製品開発設計部門での開発に25年携わり、IPS細胞やPlayStationなどの半導体検査装置の開発や理研との共同研究開発を通じて、様々な技術領域に精通。現在は、A-LABOにて技術講師を務め、PLC研修を通じてシステム設計者の育成に尽力中。「単なるオペレーターで終わらずに、「設計業務」の中心に携わり、設計者としての醍醐味を味わうための知識を丁寧にお教えします。」

上里 琢文(うえさと たくみ)

ー経歴ー
沖縄県宮古島出身。小学校1年生からサッカーを始める。学生時代に、県大会での優勝経験や沖縄県選抜チームに選出される。その活躍が認められ、京都サンガFCにスカウトを受けプロへ転向。その後、FC琉球(沖縄)→SVアラーハイリゲン(オーストリア)→JPVマリキナFC(フィリピン)などのチームを経験し、ビーチサッカーに転向(現 TOKYO VERD BS 所属)。その後、ビーチサッカー日本代表に選出され、FIFAビーチサッカーワールドカップロシア2021で史上初の準優勝を果たし銀メダル獲得。2022年より弊社アスリート社員として入社し、人材開発部マーケティング課に配属。2023年ビーチサッカー日本代表(背番号5)として選出される。現在、社会人×アスリートとして活躍中。

Instagram:https://www.instagram.com/takumi_uesato/
Twitter  :https://twitter.com/t_uesato

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