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「モデルロケット全国制覇プロジェクト:作り方と飛ばし方完全ガイド」

皆さん、こんにちは。A-Labo 電気トレーナー 加藤です!

当社では、25卒インターンの新たな取り組みとして、『モデルロケット全国制覇プロジェクト』のインターンを実施いたしました。そこで今回は、モデルロケットの作り方と飛ばし方の完全ガイドを書き綴ってみたいと思います。

皆さんはモデルロケットというものご存じでしょうか?火薬を使用して飛行するロケットで、教育用の教材として世界中で愛用されています。主に青少年の科学教育の一環として利用されていますが、奥が深く子供だけでなく大人も楽しむことができるものなので、本気で楽しんでいる大人もいます。

モデルロケットに関する各種競技が国内外で開催されています。もちろん世界大会もあり、世界各地で隔年開催されています(日本人が優勝したこともあります)。

モデルロケットは、1960年代にアメリカで利用が始まり、当時の宇宙開発ブームに乗って主に青少年の宇宙航空教育用の教材として広まりました。日本では1990年に日本モデルロケット協会が設立され青少年への宇宙科学に対する啓蒙とライセンスを発行し安全な打上のできる人材育成を行っています。

モデルロケットは安全の確保と環境への配慮が十分考慮されていて、推進薬や構造が規格化されています。推進薬である火薬は紙製の交換式カートリッジ(エンジンと呼びます)となっていて、その推力特性が公開されています。機体は紙又はプラスチックで構成されていることとなっています。また、打ち上げは電気(電池)で点火すること、そしてパラシュートなどを使用して安全に回収し再利用できるようにしなければなりません。

上記規約の範囲内であれば何を使ってもよく、身近な材料を使って作ることが可能です。本体部分は紙であればよいので、画用紙を巻く、マーブルチョコのケース、ラップの芯など探してみると身の回りで使えるものがいろいろあります。またモデルロケット専用の材料も販売されていますので、Amazonなどで購入して利用するのも良いでしょう。電池式の点火装置(ランチコントローラ)やパラシュートなどの回収装置も市販の物もありますが、自作も可能でやってみると意外と簡単です。ここまでで興味を持たれたかたは”モデルロケット”でググってみてください。

日本では、モデルロケット協会が主催する“モデルロケット全国大会”が春と秋の年2回開催されています。オープンな大会なので小学生から大人まで参加することができ、会場がJAXA宇宙センターということもあり毎回盛り上がっています。

上記のルールを理解したうえで、スケール機や競技用の機体を作って打ち上げて楽しめます。この作業の流れはこんな感じです。

1.企画
今回はどんなロケットにしようかなーと夢が広がる楽しい時。同時に、参加するイベント、予算、手持ち材料の確認など現実の部分もしっかり確認します(夢を追いすぎると失敗するので)。全国大会高度競技用のロケットの製作を企画することにしましょう。

2.設計
高度競技用のロケットを製作するために、大会のレギュレーションをよく読み、大きさ、構造設計、そこから決まる重量、使用エンジン、高度、及び安定に飛行させるための空力設計を行います。これらの要素はそれぞれが関連しているので最適化が必要で、カット&トライでは時間がかかってしますので、便利なツールを使っちゃいます。

RocSimという有名なツールがありますが有料(結構高価)なので、OpenRocketというフリーのツールを使います。フリーですが設計検証には十分な機能があります。このツールで機体の各要素を入力していくと設計したロケットの空力安定性や各種エンジンを使用した場合の最高到達高度など、重要な情報を取得できます。

中でも重要なのは空力安定性です。モデルロケットには誘導装置を載せてはいけない規則があり、空力的な安定条件を必ず満たす必要があります。といっても難しいことではなく、重心位置が気体の圧力中心位置より前にすれば良いので(バトミントンのシャトルが安定して飛ぶアレです)、シミュレーター上で重心が圧力中心の前に来るよう、フィンの形状変更や先端に重りを載せたりして最適設計します。

ここで、国内の大会の中で打上げ高さを競う高度競技用ロケットの設計例を紹介します。この競技で使用するロケットのレギュレーションは本体の直径25mm以上、長さ250mm以上となっているので、これを満たしたうえで、記録を残すためにはできるだけ軽くかつ空気抵抗の小さいロケットをイメージして最高到達高度が高くなるようロケット形状を設計していきます。さらに打ち上げ失敗しないよう、必要な強度を確保できるような配慮もする必要があります。

ロケットの空力抵抗は直径が小さいほど小さくなりますから、ボディに直径24mmのボール紙チューブを使用することにして、比較的入手が容易な材料を想定して、シミュレータ上で「あーでもない、こーでもない」と格闘すること数時間。こんな感じの設計が出来上がりました。赤丸が空力中心、青丸が重心なので両社の位置関係は良感じで、全長も268mmと少し余裕があります。

これで1/2A6エンジンを使用した時の獲得高度が80.7mになりました、もっと軽く、空気抵抗の少ない設計もできますが、チャレンジしすぎると強度不足などで打ち上げ失敗!記録が残せなくなる確率が高くなるので今回はこの辺で手を打ちます。

3.製作
設計が完了すればいよいよ製作です。設計時点で材料の選定、工作難易度の想定ができていれば、手を動かすだけで出来ていきます。材料は紙とバルサ(非常に軽い木材)が主体になります。紙も木も強度の出る方向があり目的にあった材料の切出しと軽くて強度の出る方法で組み立てていきます。

組立で活躍するのが接着剤で、主に木工ボンドを使いますがゴム系の接着剤や、液性のエポキシ接着剤も要所に使っていきます、瞬間接着剤はスグついてよいのですが硬くてもろいので接着部が衝撃で壊れやすいという特性がありできるだけ使用は控えます。組立てにあたっては設計通り精度よくかつ正確に接着していく必要があり、落ち着いて丁寧に作業するようにするとよいでしょう。

4.打上
ロケットが設計通り出来上がるといよいよ打ち上げです、推進薬である黒色火薬は紙製の筒に収められたユニットになっていて、かつ簡単に燃えだすことがないように作られています。これに点火するにはイグナイタと呼ばれる専用の点火器を使用します。イグナイタには2本の端子がありここに6.3W以上の電力を流すと”ボっ”と燃えます。エンジンの後端にイグナイタを差込む穴があり奥まで差込むと火薬部分に届くようになっているので、しっかり奥まで差込んだらランチコントローラに接続して発射ボタンを押せばエンジン本体に点火してくれます。

実際の打上げでは、安全な打ち上げ場所を確保(半径20m以内に人がいない場所、近くに電線などがない場所)して、ランチャーをセット、イグナイタにコントローラからの電線をセットして周囲と上空の安全を確認したら、カウントダウン5-4-3-2-1 点火!でコントローラの発射ボタンを押すとパシュッと結構大きな音でロケットは空高く飛んでいきます。

このロケットで60~70mぐらいまで上昇しますので、結構迫力があり感動もので、特に自分で設計したロケットが想定通りの飛行をしたときは大きな満足感が得られます。

※シミュレーションで80mの場合実際には1~2割程度高度が下がります。
5.回収
ロケットが空高く上がり、エンジン燃焼の最終段階では放出薬に点火されるので、ポンという音とともにパラシュートが開いてゆっくり降りてきます。この回収までがロケット打ち上げです。したがって風向き、風の強さ、から発射角度を設定してここぞという時に発射ボタンを押します!また降下するパラシュートを目で追って落下地点を確認して確実に回収します。ここでは自然条件とふれあうことができます(実際のロケット打ち上げでも風や気温といった気象条件で打上条件が変わったり中止になったりしますよね)。回収したロケットにはたくさんの情報が載っています。どこが良かったのか、何が問題だったのか、調査の上で次の設計・製作に繋げていきます。ココも楽しいところです(うまくいかなかったロケットには非常に多くの情報が詰まっています)。

ここまで書いてきましたが、上記5つの工程は実際の会社における開発現場(本物のロケットの開発も含めて)の工程と大きく違いません。会社では多くの人が分担して開発を進めるので個人でかかわるのはほんの一部ですが、一連の開発作業を一人で体験でき成果を確認できる貴重な機会を与えてくれるのがモデルロケットです。

ロケット工学は多くの技術の集合体です。モデルロケットを通して興味を持ったら、どこからでも学べますしどこまでも学べるとて素敵な技術/学問です。

これから始めようという人のためのロケットとして”アルファⅢ”を紹介します。これはESTES社製の非常によくできたロケットで、組立てやすく(小学生低学年でも作れる!)丈夫でかつ性能が良い三拍子そろったロケットです。ランチコントローラから発射台までセットされたスタータセットなどもあります(Amazonで購入可能です)。

またこのクラスですと安全な打上場所(半径10mの安全距離)さえ確保できれば無許可で打ち上げできますからまずはこちらからはじめてみてはいかがでしょう!?

参考URL
Estes https://estesrockets.com/

Estes 初めにページ https://estesrockets.com/get-started/

日本モデルロケット協会 https://www.ja-r.net/

※日本モデルロケット協会では、モデルロケットの安全な取扱いと打上に関する講習を、ライセンス講習会として毎月開催しています、打上実習も含んでいて受講後4級ライセンスがもらえますのでお勧めします。

最後までご覧いただきありがとうございます。「エンジニアの未来」は毎週月曜日更新!次回もお楽しみに!