「ITスキル標準とiCD認証が導く未来:新しい事業の軌跡」
弊社アスリート社員/上里琢文選手(ビーチサッカー日本代表)の「上里琢文が行く!」
このシリーズ企画は、上里選手が弊社の部署や社員などにインタビューを実施し、アスリートならではの視点をふまえ、皆さまに弊社のことをより知っていただく為のものになります。
今回は、ソリューション部 ITS課、課長の S・T さんにインタビューをさせていただきました。お話しいただいた内容は・・・
・ゼロベースからのITS課の立ち上げ
・サービス提供の指標=ITスキル標準(ITSS)
・iCD認証
・今後の展開
・IT業界の潮流
となります。
上里:「本日はよろしくお願い致します。」
S:「こちらこそお願い致します。」
ゼロベースからのITS課の立ち上げ
上里:「早速ですが、『ITS』(課)は何の頭文字なのでしょうか?」
S:「はい、『IT』はInformation Technology(インフォメーション テクノロジー)の略で、『S』はService(サービス)のSですね。『ITS』で検索すると ITソリューション(solution)が出てくる場合もありますが、当社ではITサービスと定義しています。
ソリューションは、「解決する」や「何かを作り出す、生み出す」といった業態で使いますが、当社ではお客様のソリューションの技術支援サービスの提供もさることながら、付加価値の高い、高度なヒューマンスキルも提供しています。」
上里:「Sさんは、IT部門を立ち上げるために入社されたと伺いました。入社時にITS課は存在していなかったわけですが、どうしてセントラルへの入社を決断されたのでしょうか?」
S:「はい、ITS課は入社後一年経ってから開設されました。私がセントラルエンジニアリングに入社を決めたのは、単純にIT系の派遣事業の営業をするだけではなく、ITサービスの事業基盤を作りたいという要件があり、ゼロベースから立ち上げることに魅力を感じたからです。」
上里:「不安はなかったのですか?」
S:「むしろ新しい事業の柱を作れることにワクワクしました。仮に事業の土台ができている同業他社に就職したとしても、そこには優秀な人も大勢いるかもしれない。その中で淘汰されるよりも、新しいことに挑戦できることが一番の決め手でしたね。成功も失敗も結果がすべて自分次第って、面白いじゃないですか。」
上里:「共感できます!僕もビーチサッカーに転向した時はそんな心境でした。前職では何をされていたのですか?」
S:「約20年間、システムインテグレーターと言われる、IT企業の営業でした。営業一筋でしたので私は技術者ではないんです。」
システムインテグレーションとは、「企業のシステム開発や運用などを請け負う事業またはサービス」を指す言葉で、顧客の要望に応じて、ソフトウェアの設計や運用などの業務を請け負うこと。この請け負う企業のことを「System Integrator(システムインテグレーター)」、または縮めて「SIer(エスアイヤー)」と呼ぶ。
上里:「僕はIT分野について全然わからないのですが、IT系といったら、かなり広い範囲を指している気がします。セントラルでは具体的にはどういった事業展開になるのでしょうか?」
S:「おっしゃる通り、IT分野はかなりの広範囲を指します。もともと当社はエンジニアの集団ですので、やはりIT事業をやるとなると、まずはIT系のエンジニアを雇用して、お客様のシステムを開発をしたり、ネットワークを構築するようなサービスを提供することになります。」
上里:「ITサービス課というのはそのサービスの取りまとめをする部署というわけですね。」
S:「そういった役割はもちろんですが、エンジニア達がきちんと成長していけるような筋道を作ってあげるところでもあります。」
サービス提供の指標=ITスキル標準(ITSS)
上里:「IT系エンジニアの成長の筋道は、機械や電子分野とは毛色が違うように感じます。」
S:「大きく違います。というのは、そもそもIT業界ではキャリアマップ を作るフレームワーク(共通の枠組み)が国から明確に提示されているのですが、ハードウェアや機械、電気の分野にはこういった指針が少ないからです。」
上里:「それはなぜでしょうか?」
S:「例えば、国産大手メーカーは、日本の高度経済成長期に自動車や家電などといった機械を開発、製造してきました。それぞれの企業が切磋琢磨して積み上げてきた技術がありますので、国が介入しなくても『技術とはこういうものだよ』という、いわば『イズム』が企業ごとに確立されているため、指針を示す必要がなかったからです。逆に統一した指針を打ち出してしまうと、競争力が落ちるのではないかと思います。一方、ITは、後発的な業界です。パソコンで仕事をするようになったのは1990年台の後半以降で、それまではワープロだとかファックスを使っていたわけですから。」
上里:「標準とする指標が必要となる前に、すでに機械メーカー各社には独自の基盤があった。それに対してIT業界は近年のインターネットの普及に比例して広まったためですね。」
S:「そうですね。もう少し詳しく説明しますと、IT業界には、日本の経済産業省の統制のもと、世界にならって『ITスキル標準(ITSS)』という『ITスキルというのはこういったものです』と標準化したフレームワークが提示されています。国が用意した枠組みですから、これをベースにソフトやIT業界の企業もシステム開発をしていきました。日本のフレームワークは、どちらかというとアメリカのものを基本にしていますが、それとは別に、世界標準がもともとあるんです。」
上里:「ITのエンジニアさんにはランク分けがあるのですか?」
S:「国が7段階定めています。初心者をゼロとして、7まであります。」
上里:「スキルの基準が明確だとわかりやすいし、ランクを上げようという励みになりますね。」
S:「誤解のないようにお話ししますが、日本の家電メーカーも世界に進出していくには、世界に適合していく必要はあります。製品の品質や工場の環境は国際基準をきちんとクリアしているという安全性の担保は必要です。この基準(規格)として、『ISO』という国際規格があります。当社でも品質管理適合基準の『ISO9001』や環境保全の適合基準『ISO14001』を取得していますし、先日は新しく医療機器産業に特化した適合基準の『ISO13485』を取得しています。」
上里:「いくら実績があるとはいえ、各メーカーが好き勝手にしていては世界基準での『信頼』は得られませんよね。このITスキル標準は、業務上で取得が義務付けられるようなものなのですか? 」
S:「義務ではありませんし、取得していなくてもエンジニアは仕事が出来るのですが、これが当社の課題でもあります。これまでは会社としてITSSを活用できていませんでした。社員も義務ではないので、自分から資格取得を頑張ろうと思いません。この春に入社した新卒社員も、初級にあたる『基本情報』を取得しているような人も少ないので、取得を促しています。」
上里:「敢えてエンジニア寄りの言い方で伺いますが、資格を持っていなくても仕事はできるのに、どうしてわざわざ資格を取得する必要があるのでしょうか?」
S:「これは私がよく新卒のエンジニアと話すときに話題にするのですが、『車を運転するのに、どうして運転免許を取得しなければならないのでしょうか?』というものがあります。当たり前な質問すぎて意外と答えに詰まる方が多いのですが、答えとしては、基本的な技術と交通ルールを包括的に習得して、事故を起こさないためですよね。」
上里:「運転免許は取得するものだ、としか思っていませんでしたが、確かに目的としてはそういうことですね。」
S:「IT業界でいうと、免許がなくても仕事はできますが、セキュリティ事故が非常に多いんです。昨年ですと、銀行のATMが止まったり、役所の住民データが入ったUSBを鞄にしまい、酔っ払って置きっぱなしにしてしまったという事故が起こりました。そういったセキュリティリスクを抱えるIT業務では、やはりIT業界で仕事をする上での作法のようなものを資格として習得していることがアドバンテージになるのです。だから我々はお客様に満足していただける技術サービスを提供するために、明確な指標となる資格を取得してもらうようにしています。」
上里:「自分ひとりで完結する『ものづくり』の場合は資格の必要はなさそうですが、お客様の要望に応えて、周囲と関わりながら作業を進めるIT系では資格が『違い』になりそうですね。」
iCD認証
上里:「今 ITS課で取り組んでいるのは、主に派遣業ということですが、それ以外に取り組んでいる業務もあるのですか?」
S:「事業を拡大していくにあたり、『当社はIT事業をやっていますよ』と可視化をしていく必要があります。その一環として、国が推奨する『iCD認証マークの取得』があり、先日『シルバー』から更新されて、『シルバー プラス』を取得しました。
iCD(iコンピテンシーディクショナリ)
企業においてITを利用、活用するビジネスに求められる業務(タスク)と、それを支えるIT人材の能力や素養(スキル)を「タスクディクショナリ」と「スキルディクショナリ」として、それぞれ辞書のように参照できる形で体系的にまとめたもの。
コンピテンシー:職務や役割において優秀な成果を発揮する行動特性
ディクショナリ:辞書
上里:「 iCD認証 とはどういったものなのでしょうか?」
S:「これからのIT時代に求められるビジネス戦略とそれを支える人材育成のフレームワークです。例えば町工場のような小さい企業でも、伝票の入力など、多かれ少なかれIT化は進んでいますし、我々ぐらいの中小よりはちょっと大きいぐらいの企業もあれば、大企業までさまざまありますが、企業規模に関わらず、ITを活用して企業が成長していくことを推進しています。経済産業省の外郭団体である「IPA」が国家資格やITスキル標準(ITSS)を推進し、また「IPA」と横並びにある外郭団体『iCD協会』が『iCD』を社会に提供しています。当社はこの『iCD』を活用してITサービスの事業基盤を構築し成長させていることから「iCD認証」を取得しているわけです。」
上里:「ITを活用して企業が成長していく、とは例えばどういう状態ですか?」
S:「ITの活用の仕方はさまざまありますが、当社が主に取り組んでいることとしては、
・当初のホームページにはIT部門の要素が全くなかったところ、IT事業の紹介セクションを加えたことによって、ITエンジニアの採用に繋がりました。
・ITエンジニアの社員の雇用を増やして売上が拡大出来ました。
・そのエンジニアが成長し続けられるような仕組みをモデル化して形にしました。
といった内容です。その他にも、業務管理課ではテレワークを始めて働き方改革ができました、などといったことなど。活用方法に決まりはないので、会社側が考え、実行した結果を協会に審査してもらうんですね。」
上里:「このマークを取得すると何かメリットがあるのですか?」
S:「iCD認証そのものは、まだ業界内でも一部の人しか知らないと思われますが、当社はITサービス事業のベースがなかったので、『国が推奨しているフレームワーク活用することで認証されるマーク』を取得することで、エンジニアや企業に信頼してもらえる土台を作ることが出来ました。」
上里:「今回取得したのは『シルバープラス』ということですが、全体としてはどんな構造になっているのですか?」
S:「iCD活用企業認証では、企業でのiCDの活用のレベルや成果の大きさに応じて証レベルが用意されています。Blue、Silver、Silver Plus、Gold★、Gold★★、Gold★★★の6段階です。」
・Gold★ ・Gold★★ ・Gold★★★
・Silver ・Silver Plus
・Blue
出典:iCD Association HPより
S:「認定には毎年審査があり、成長度が審査会で認められれば昇格できます。世の中のほとんどの認定には、クリアしなければならない基準があると思うのですが、iCDの認定は『ITを活用した結果、これだけ成長しました』というものが表現出来れば承認されるので、大企業から中小企業まで活用できることが特徴です。」
上里:「出した結果によって評価されるのではなく、頑張った具合が評価されるということになるのですか?」
S:「実際には『頑張ったね』というのは抽象的だったり情緒的だったりするため、評価が出来ません。そのため、例えば売り上げは前年度の何パーセント以上達成など、全部数字にして提出していますね。」
上里:「ゴールド三ツ星を取得するのはどれくらい大変なのですか?」
S:「まだ三ツ星を取得していないので、どのぐらいなのかわからないところではありますが、例えばシルバープラスの取得には5年かかると言われているのが、約2年で取得できました。毎年一段ずつ、5年間くらいでの取得を考えています。来年はゴールド一つ星を目指しています。」
上里:「Jリーグの構造に似ていますね。サッカーを普及させたいJFA(日本サッカー協会)が地域を活性化させる目的で、Jリーグを設立。J1を頂点にJ2、J 3、JFL、地域、都道府県リーグと上に登っていくところがイメージしやすいです。でも評価基準が『強さ』ではないというところが決定的に違いますね。だからセントラルエンジニアリングも頂点を目指せる。夢がありますね。」
今後の展開
上里:「ゼロベースからIT事業を進めて、ここまで来ました。この現状はどのように感じていますか?思い通りに進捗していますか?」
S:「想定通りに行っているところと行ってないところがあります。事業計画としての目線から見れば、売上の成長といったところは前の会社でやった経験を活かすことができて、クリアしていると思います。課題としては、社内での事業規模がまだまだ小さいので、機械・電気・プラントといった当社を引っ張っている部門に人数で近づくことですね。」
上里:「現状の方向性でこのまま伸ばしていくことになるのでしょうが、その先の展開についてはなにか考えられることはありますか?」
S:「もちろんあります。『資格取得制度の導入』『マーケットの拡大』『新技術の活用』この三本柱です。これを実現することでiCDのゴールドにランクアップできると確信しています。」
上里:「新技術というのは?」
S:「一例では『クラウド』です。当社のソフト開発のチームがクラウドを活用できれば、仕事を取れるかもしれませんし、セントラルエンジニアリングでクラウドサービスを立ち上げることも出来るかもしれません。マーケットが拡大するわけです。そのためにはクラウドサービスの技術力をつける必要があるので、『資格取得制度』を導入する、という具合に連動していきます。」
上里:「資格取得制度では、資格を取得することで評価に影響するわけですよね。資格の取得とはそういうものであって欲しいですよね。」
S:「うちの会社だけではなくて、世の中全体そういう風潮になりつつあります。近い将来に実現したいですね。」
IT業界の潮流
上里:「Sさんが感じている、今のIT業界の潮流みたいなものがあれば教えてください。」
S:「ローコードやノーコードとか(プログラミング言語を必要としない開発手法)がメインになってきて、ものづくりが少なくなってきているように感じています。例えばアプリをダウンロードして、自分のプロフィールを入力しようとした時に、性別や住所など、全部選択肢が出てくるじゃないですか。これは全部AIがやっています。このように利用者側がそのシステムに合わせていく時代になってきています。」
上里:「システムは要望に合わせて作るものではないのですか?」
S:「これまではそうでした。『こういうシステムを作りたい』というユーザーからの要望があれば、システムをお客様ごとの要望に合わせて作っていました。今は『このシステムを利用し。業務の流れをシステム通りに合わせましょう』という流れになってきています。つまりそのベースとなるシステムを活用し、業務する側のユーザーが合わせていくんです。」
上里:「となると、求められているのは?」
S:「ユーザー側の業務を理解していることが重要になります。そのためには、業務フロー、法律など豊富な業務知識が必要となってきます。」
上里:「工業製品はどれだけ便利なものを生み出すかを考えているのに対して、システムはどのように使い使いこなすのかを考えるのですね。」
S:「世の中は今後もITよりに変わり続けます。例えば中国では、奥地での生活でも財布を持たなくて全部スマホで決算が当たり前ですし、電気自動車などの運転席はコックピットがタブレットのようなデジタル操作になっている等、どんどん変化しています。ITを基礎から学んでいくと、職種の選択肢もそれに比例して増えていきます。スキルアップすることで、5年後には今では考えられなかった仕事をしているかもしれません。」
上里:「僕はパソコン初心者で、今も全然使いこなせないのですが、IT系でのお仕事は無理ですか?」
S:「そんなことはないですよ。今の話は技術者に限った可能性の話ではありません。それほど専門的な技術がわからなくても、ITの基礎的な資格や用語を取得していれば、営業、採用、就業後のキャリアアドバイザーなど、30代40代の方でも、違う業界の経験を生かして活躍できると思います。僕自身も元々エンジニアではありませんので。」
上里:「最後に自社のITエンジニアへ向けてコメントをお願いします。」
S:「はい、会社もIT部門に対していろいろな投資をしてくれていて、少しずつではありますが部門として順調に年々拡大しています。入社していただいたエンジニアには、まず業務やスキルに対して適正な評価をすること。その上で今後のスキルアップやキャリアアップのため、できるだけわかりやすい道筋を作っています。」
上里:「エンジニア一人ひとりの努力が無駄にならないようにケアしていただけるのですね。」
S:「成長する土台というのは基本的に現場になります。マーケット(就業案件)は増やしていけると思うので、自分が身につけたスキルを活かせる次の現場、ステージもきちんと用意する。スキルとステージの両軸で事業は発展していきます。ITエンジニアの皆さんにはぜひスキルを磨いて資格を取得していただきたいですね。」
上里:「本日はありがとうございました。」
S:「ありがとうございました。」
S・T
千葉県千葉市生まれ。現在も家族と千葉市在住。 2020年に中途入社。ソフトウェア開発企業にてITサービスの営業を約20年経験。 社会インフラ関連を中心としたプロジェクトに請負、派遣等多数の実績を通して業界経験を積む。 セントラルエンジニアリングにはITサービス事業を更に拡大する事を目的として、営業、採用など業務の垣根を越えて様々な部門と連携しながら活躍中。 iCD協会認定「 iCDアドバイザー」
上里 琢文(うえさと たくみ)
ー経歴ー
沖縄県宮古島出身。小学校1年生からサッカーを始める。学生時代に、県大会での優勝経験や沖縄県選抜チームに選出される。その活躍が認められ、京都サンガFCにスカウトを受けプロへ転向。その後、FC琉球(沖縄)→SVアラーハイリゲン(オーストリア)→JPVマリキナFC(フィリピン)などのチームを経験し、ビーチサッカーに転向(現 TOKYO VERD BS 所属)。その後、ビーチサッカー日本代表に選出され、FIFAビーチサッカーワールドカップロシア2021で史上初の準優勝を果たし銀メダル獲得。2022年より弊社アスリート社員として入社し、マーケティング部に配属。2023年ビーチサッカー日本代表(背番号5)として選出される。現在、社会人×アスリートとして活躍中。
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