「インフラを支える技術力!横浜工場の製造現場に迫る」
弊社アスリート社員/上里琢文選手(ビーチサッカー日本代表)の「上里琢文が行く!」
このシリーズ企画は、上里選手が弊社の部署や社員などにインタビューを実施し、アスリートならではの視点をふまえ、皆さまに弊社のことをより知っていただく為のものになります。
今回は、工場管理室 室長 兼 防災水利PJの製造担当のK・Sさんにインタビューをさせていただきました。(2023年7月)お話しいただいた内容は・・・
・横浜工場ってどんなところ?
・何を作っているの?
・品質管理と今後
以上の3テーマとなります!
横浜工場ってどんなところ?
上里:本日はよろしくお願いいたします。
K:こちらこそお願いいたします。横浜工場へようこそ!
上里:さっそくですが、工場というと、広大な敷地に三角屋根の大きな建物が立っているようなイメージがありますが、セントラルの工場は一般的な建物の形をしているのですね。
K:普通すぎて初めて来た方は拍子抜けされるかもしれませんね。一般的なイメージでは、工場というと中には大きな機械で製造ラインが組まれていて、何かしらの製品が すごい勢いで生産され続けるイメージが強いかと思います。
上里:そのイメージはありました。 本社がある新横浜からバスで15分程度で来れてしまうのも意外でした。
K: この辺りは、昔は大手自動車メーカーのモータープール(出荷前の車両を保管する場所)があったり、現在でも町工場が多いエリアです。近年ではマンションや住宅も次々に建設されて、すっかり住宅街になっています。
上里:工場地帯という印象はほとんどありませんね。この工場はいつから建っているのですか?
K:それでは、現在までの工場の歴史を説明させていただきますね。
1967年、綱島地区にセントラル最初の工場が建てられました。
1982年、ガスメーター製造工場の跡地を購入して現在の横浜工場が建設されました。これにより様々な製品の開発に関わるようになっていくのですが、徐々に増加していく社員数と製造量の増加によりこの工場も手狭になっていきます。特に主要生産品である水利システム/PHSの基地局/警察無線/防災システムの生産量が増えたことで製造スペースが確保し切れず、総製造数の一部しか請け負うことが出来なくなっていたため、新たな工場を建設することが決まりました。
1993年、既存の建物を解体し、現在の姿の工場が建設されました。地上4階建て、総床面積680平米という規模。最大積載量1,500kgの大型エレベーターや、耐候性試験などに使う恒温恒湿室、シールド室など、当時の最新設備を備えた近代的な工場になりました。
K:私が入社したのが1995年なので、配属されたときの工場は新築のピカピカでした。
工場では何を作っているの?
上里:先ほど、大きな機械やロボットを使ってライン生産している工場のイメージの話をしましたが、そういった大きな装置は見当たりません。この工場ではどんな物を作っているのですか?
K:はい、現在当社は昔からご縁のある取引先を含め、大きく3つの製品の取引をさせてもらっています。鉄道関連の部品、防災無線のアンプ、ダム警報観測制御システムです。それぞれがインフラの設備に使われているものですので、数年に一回は入れ替えもありますし、システムや規格、法令の変動によって都度部品を交換していかなければならないものなので、毎年一定数量の注文が見込める製品になります。
上里:需要がなくなったら売れなくなるようなエンドユーザー向けの消耗品ではなく、完全にインフラの一部なのですね。安定した注文は嬉しいところですが、間違いなく安定した動作をしなければならないという面では、かなりの技術力が求められるのではないですか?
K:そうです。そのため当社ではそれぞれの製品の高度な需要に対応するため、チームが組まれています。鉄道関連は鉄道プロジェクトチーム、防災無線アンプは防災プロジェクトチーム、ダム警報観測制御システムは水利プロジェクトチーム(以下PJ)の3チームですね。
上里:聞いたことのあるPJ名が出てきました。新横浜エンジニアセンターにも水利・防災PJと鉄道PJの方が勤務していますね。
K:それぞれ設計の部分は本社でもやっています。ここまでの説明で想像出来てきたと思うのですが、ここで生産するものは何万個売れるようなものではなく、一点ものから、数百個程度の受注の仕方をするような製品、各設置現場の状況に対応してカスタマイズして出荷するような特注品を製造しているんです。これを少量多品種製造といいまして、当工場の最大の特徴になっています。
上里:だから大量に同じものを作るような設備がない、というより必要ないのですね。納得できました。
K:では次に、工場の1階から順に説明していきますね。
上里:お願いします。
1階 購買課
K:4階建のそれぞれのフロア毎にPJが割り振られているのですが、1階はその元締め的な役割を担っています。1Fには「総務関連」いわゆる事務室と、「購買課」が入っています。購買課ではプリント基板(緑色の板)に使われるIC電子部品からネジまで、約6300種類の細かな部品の購入管理や、板金や筐体(機械や電子機器を収める箱)の発注までを行なっています。横浜工場には、基板にIC部品を取り付ける機械がないため、必要な部品を用意した上で、協力会社にはんだ付けにあたる工程だけをお願いしています。実装されて納品されてきた基板は全てこちらで動作確認、検査をしてから部品として製品に組み込まれていきます。
上里:6300種類ですか!管理が大変そうですね。
K:そうなんです。定期的に棚卸しもするのですが、細かい部品の数量までひとつひとつ数えるのはかなりしんどいです。また、部品には使用期限という賞味期限のような概念があり、3〜5年を超えた部品は破棄しなければなりません。そのため、無駄な在庫を増やさないように心がけています。
上里:3~5年で破棄するのですか!でも確かに5年前の部品を使った製品が新品だと言われても腑に落ちないかもしれません。
2階 鉄道PJ
K:2階には鉄道PJの製造部門が入っています。鉄道と言っても、電車を作っているわけではなく、踏切を作っているわけでもなく、信号を作っているわけでもありません。セントラルが作っているものは、信号機や踏切が正常に動いているかどうかを自動的に検知するための装置のセンサー部分です。
上里:監視装置の方でしたか。鉄道の運行のために2重3重の備えがあるのですね。
K:実際の工程をお話しすると、これは鉄道に限らず製造全般に同じような流れになります。1階の購買課で用意した部品が協力会社さんで基板に実装され、納品されてきます。そこにさらにこちらでできる製造工程を加え、検査。問題なければ組み立て、完成品の調整検査を経たのち、お客様立ち合いの検査。合格品を梱包してようやく出荷となります。また出荷した製品が落雷など、やむにやまれぬ事情で故障した場合も保守・修理に対応しています。
検査の様子
上里:自社で設計製造したものだから修理対応が可能なわけですね。検査の工程も多いですね。
K:そうです。製品を出荷するまでの作業割合は、部品調達で1割、実際にものを作っているのは3割程度で、5割以上は動作試験をしているんですね。残りの1割の出荷にも検査が含まれています。
上里:人の命に関わる製品だけに動作不良はあってはならないわけですね。
3階 防災PJ
K:続いて3階です。3階では防災PJの製造部門が入ってます。ここで作っているのは防災無線アンプです。
上里:夕方になると聞こえる「夕焼け小焼け」など、時間を知らせたり、いざという時には緊急放送をするスピーカー用のアンプですね。
K:そうです。年間で2500〜3000台生産販売される当社のメイン製品ですね。他社からの依頼で制作し、他社ブランドの製品として販売するものもあれば、自社製品としてセントラルのロゴを入れて販売するものもあります。
上里:他社のブランド名で生産するのは俗に言う「OEM」という業務形態ですね。
OEM(Original Equipment Manufacturing」/ 他社ブランドの製品を製造すること
K:そうですね。ここ横浜工場ではEMSにも対応していますし、次の4階で製造している水利案件はODMにあたります。
EMS(Electronics Manufacturing Service)/ 電子機器の製造を受託すること
ODM(Original Design Manufacturing )/ 受託者が、製品の生産だけでなく設計やデザイン(意匠)なども請け負う形態
4階 水利PJ
K:最後に4階ですね。ここには水利PJの製造部門と、水利PJ・鉄道PJの技術部門、それから食堂が入っています。食堂といっても工場内で調理はできないので、仕出し弁当や持ち込みの食事をとる休憩所のようなものです。
上里:「水利」という言葉は普段の生活では聞き慣れない言葉ですね。
K:そうですね。水利PJで取り扱っているのは、ダム警報観測(雨、水位)制御システムです。大雨の際など、ダムが放水する際に下流の地域に事前に警報を出すための装置です。川沿いに何キロかおきに大きなスピーカーが設置されていまして、ダムの親局から各スピーカー(放送装置)を鳴らすための装置(子局)に指令を出すわけです。当社でこのシステムの設計開発からものづくり、調整/検査、動作確認までを行い、立ち会い検査に合格後、出荷しています。
上里:Kさんは防災・水利PJの製造担当なのですよね?
K:そうですね、実質的には製造責任者をさせていただいておりますが、最近では工場全体の管理業務も行っています。
上里:工場全体の管理というと、具体的にはどういった業務があるのでしょうか。
K:はい、この工場内だけでなく、協力会社さんも含めた製造工程の工程管理がメインとなりますが、自分自身で作業することもあります。また完成品を納品して終わりではなく、実際に製品が使用される現場まで同行し、動作確認までする場合もあります。警報システムの無線の部分自体はセントラルの製品ではないのですが、現地でシステムとして組み込んだ上で、実際にその無線が飛ぶところまで確認することもあります。やはり現地にいかないとわからないことはたくさんありますので。
上里: 徹底しているんですね。ここまでで話していただいた、鉄道信号用保安装置関連の部品、防災無線アンプ、ダムの観測制御システムの3大製品以外のものは作っていないのですか?
K: この3大製品が安定して製造している部分になりますが、EMSも含め、様々な依頼に対応していますので、年間で100種類程度の製品は生産してます。また最近は新しい取引も増えてきていますので、人員、設備ともに不足気味になってきているのが現状です。
品質管理と今後
上里:セントラルはISO9001という品質管理の認証を受けていて、次は工場でISO13485という医療機器製造の認定を目指していると聞きました。
K:はい、そうなんです。これまで当工場では製品を出荷するにあたり、製品を担保するのはもちろんですが、お客様から動作不良などの修理依頼を受けた際に、製品別に後追いのできる体制を整えてきました。これに加えて直近では本社内に「ISO9001委員会」や「品質管理委員会」など品質に関わる委員会も立ち上げられ、会社全体で品質にこだわった製品を作り上げていこうという体制が整ってきています。
上里:ISO規格では、こういう風に業務を進めるべきですというたくさんの項目が書いてありますよね。対応は大変ではないですか?
K:これまでも監査への対応はしてきましたが、これを機会にさらに本格的に取り組んでいくことになります。ISOの観点からこれまでの業務の仕方からさらにやるべきこと、当社の実情に合わない項目などを改めて精査している段階です。
上里:環境整備にも取り組んでいると伺いました。
K:はい、毎日昼休み明けの15分間、全社員で工場内を整理整頓、清掃をしています。これも項目は定期的に見直し、常に改善しています。
上里:今後の横浜工場はどうなっていくのでしょうか?理想的な形を教えてください。
K:そうですね、理想を言えば、現在はリピート品が多く製造しているわけですが、そこに頼らず、本当の意味の量産品(何万何十万個生産)という物に手を出し、取り入れていきたいと感じています。そうなると、この工場では対応できませんから、次のさらに大きい工場を作りたいですね。
上里:次の工場を作りたいってカッコいいですね。
K:今の横浜工場の立地では敷地面積が足りないため、量産は絶対に無理なんです。それをやるには別の場所、車で行かないといけないような本当に遠いところに工場を建てる必要があります。
上里:大量生産すると利益も出やすくなりますよね。
K:出やすいでしょうね。利益はもちろんですが、やはり品質を担保することが重要ですので、ISO9001にもしっかり対応する必要がありますね。
上里:大量生産品かどうかはともかくとして、これから新しい生産品の柱は作れそうですか?
K:つい最近の話ですが、毎月何千台の生産といった仕事がありましたが、今の当社の規模では対応できないと見送った案件がありました。そういったものをすぐに「出来ます」と受け入れられる体制であれば、業務の幅は膨らんでいきます。
上里:体制作りも必要そうですね。では最後に、原点に立ち返る質問となりますが、やはりものづくりは楽しいですか?
K:自分の手を動かして完成まで持っていくっていうのはやっぱり楽しいですよ。
上里:ものが完成したときの喜びは想像できるのですが、その過程の細かい作業にも面白さがあるのですか?
K:ありますあります。セントラルは特注品で一品ものも多いのですが、一品ものですから配線であったり、ケーブルのアーチの付け方や見栄えであったりでも自分のセンスが問われる部分があります。綺麗な配線や仕上がりにこだわって出来上っていく過程の充実感はたまらないですね。
上里:その過程が楽しい感覚、よく分かります。僕たちも試合以外は日々の練習という過程しかないんです。辛い練習もあるのですが、その練習の過程を楽しんで、前向きな気持ちで取り組めているのかどうかで、成果が全然違ってくるんですよね。
K:サッカーでも違うものですか?
上里:違います。また残念ながらそのことに本人が気づいていないことも多いです。例えばただボールを止めるだけでも、綺麗に理想通りの高さと場所に止めようとする前向きな選手と、ただ止まればいいと思っている選手では成長速度も結果も違ってきます。またその意識の違いは、素人にはわからなくても「見る人」が見ればわかります。
K:こだわりですね。さらに言ってしまえば、「誇り」に近い感覚にも感じますね。
上里:確かに、自分を動かす原動力は自分や自分を取り巻く環境への「誇り」なのかもしれませんね。Kさん本日はありがとうございました。
K:こちらこそありがとうございました。
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K・S
東京都府中市生まれ。現在は神奈川県海老名市に在住。
1995年にセントラルエンジニアリングに入社。学生時代から何かを作る・電気やモノづくりに携わる仕事がしたいという想いからセントラルエンジニアリングの製造部門へ入社。以後、28年間製造部門で防災システムや水利(ダム関係)・ 鉄道・RFIDなど幅広く経験。特に水利(ダム警報システム)のモノづくりに長年携わる。現在は製造全般の工程管理を中心に、協力会社様/お客様の対応、現場作業まで幅広く製造として活躍中。
上里 琢文(うえさと たくみ)
ー経歴ー
沖縄県宮古島出身。小学校1年生からサッカーを始める。学生時代に、県大会での優勝経験や沖縄県選抜チームに選出される。その活躍が認められ、京都サンガFCにスカウトを受けプロへ転向。その後、FC琉球(沖縄)→SVアラーハイリゲン(オーストリア)→JPVマリキナFC(フィリピン)などのチームを経験し、ビーチサッカーに転向(現 TOKYO VERD BS 所属)。その後、ビーチサッカー日本代表に選出され、FIFAビーチサッカーワールドカップロシア2021で史上初の準優勝を果たし銀メダル獲得。2022年より弊社アスリート社員として入社し、マーケティング部に配属。2023年ビーチサッカー日本代表(背番号5)として選出される。現在、社会人×アスリートとして活躍中。
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